Goldsmith Windsor chair

2002年 
九州産業大学芸術学部デザイン学科
山永研究室制作

ゴールドスミス ウィンザーチェア

ヴィクトリア&アルバートミュジャムの
’ゴールドスミス'チェア
 2001年





1990年代までV&Aに展示され
ていた3脚のウィンザーチェア


2001年 

V&Aにおける「ゴールドスミス」 ウィンザーチェア」の実測調査

このゴールドスミス・コム・バックアームチェアーをよく眺めてみると、

その丸くお皿状のサドル形シートの後部が、背を支える2本のスティック

を差し込むためのいわゆるボブ・テールと呼ばれる部分に広がって延びて

います。シートの丸い形にそって扇型に上に伸びたスティックは笠木に達

し、しっかりと後ろを支える構造になっています。アームは3つの部分に

カットされ、それぞれ湾曲した形に加工されたあと、相欠き継ぎ(1ap

joint
)によって組立てられています。その両先端はアームサポートによ

って支えられています。 ゴールドスミスチェアの構造には以下のような

特徴があります。木材をフンダンに使用しながらも、合理的に無駄のない

材料の取り方には感心させられます。後ろ脚と前脚は同じ部品からなって

おり、座へ直接ホゾで打ちこむコロビの角度の違いでその区別がわかる

です。その違いが座り心地を決定付ける微妙な角度を形成しています。貫

3本とも同じ部品からなっており、(センターの貫が少し長め)座板の

厚みと笠木の幅が同じなので、同じ部材から木取ることができます。アー

ムとアームサポートの部材は座板の部材を二枚にわいて取ることができま

す。結果、500ミリ幅の部材から木取りが可能であることがわかりました

周知のことですが、ウィンザーチェアには図面がありません。スティワ

ート・リンフォード社にさえ図面はなく、シートの型板があるだけです。

図面の話をしてもあるのがおかしいという表情をされるぐらいです。そこ

で私なりの図面を考えついたのが軸側投影によるCAD図面です。それは

座面を主軸に平面、立面、側面を描く方法です。ゴールドスミスチェアも

同じ方法で図面を描いたのですが、シートは正円で、それにボブテールと

いう尻尾の形が取り付けられた形は、まさかと思うほどの単純な構造から

なっていたのです。さらに推し進めていくうちに、脚の傾きとスティック

の傾きがどれも円の中心に向かっているということでした。そうするとア

ームはもしかして同心円からできるのではないかと推測して描いてみると

、そのとおり、椅子の形になったのでした。※参照( cinii- イギリス

カントリーファニチャー
) しかし後の現物との比較で、多少異なっては

いましたが、基本的には同心円から図面を描くことができたのでした。そ

こで推察できることは、ウィンザーチェアの複雑な構造、ようするに、シ

ートからアームを抜けて、笠木に達するスティックの角度や脚のころび角

は、職人の経験と勘によるものですが、その初期は同心円の中心に向けた

角度から発して、いろいろと形を変えていくうちに完成されていったので

はないかという推論を立てることができたのです。


※ ころび:脚の角度が四方に末広がりに傾いていること




同心円による作図順



三面図

上記図面は九州産業大学芸術学部研究報告第31巻 2000年
イギリスカントリファニチャー「ウィンザーチェア」
の形態分析研究Ⅳ
 より抜粋

参照


ゴールドスミス・ウィンザーチェアとの出会いについて

 

1718世紀の英国ウインザーチェアーの形態に目を向け,いくつかのタイブを

 

 あげて調べていくうちに、ひときわユニークな椅子があることに気付いたので

 

 す。長い間、英国ヴィクトリア&アルバートミュージャム(V&A)の英国家具

 

コーナーの入り口に、ひっそりと展示されていた3脚のウィンザーチェアの一

 

つ、それがゴールドスミスチェアです。ウィンザーチェアの原始的形態を残し

 

 ながらも、その後の特徴をすべて備え、英国で育まれたシンプルで人間味豊か

 

 な形態は、現代にも通じる普遍的な美をそなえています。大英博物館と双璧を

 

 なすヴィクトリア&アルバート・ミュージャム(V&A)は応用美術の収蔵品

 

では世界最高・最大の美術館といわれています。そのV&Aを訪問する最初の

 

機会を得たのは1991年のことでした。使い古され、いたるところ剥げ落ち

 

 た黒塗りの椅子が妙に印象に残ったものでした。それも古いはず、18世紀の

 

詩人で劇作家でもあったオリバー・ゴールドスミス(1728-1774)が所有してい

 

 たことにより付けられた名前だったのです。その後、海外研修の機会を得て、

 

 現代家具の源流と目されるウィンザーチェアの形態研究の目的でV&Aを訪問

 

 、ファニチャー&ウッドワーキング・デパートメントの協力のもと、実測調査

 

をすることができました。結果を持ち帰り図面をお越し、それをもとに模型を

 

作り、何度も試作製作を重ね、2001年には再度海外研修の機会を得て、細

 

 密な実測をもとに2005年にようやく本物に近い完全な形態の椅子が完成し

 

 ました。その過程でこの椅子が現代チェアの源流そのものであることを確信す

 

 るようになったのです。世界にただ一脚しか残っていないこのゴールドスミス

 

 ・チェアはウィンザーチェアの原始的形態を残しながらその後の進化を促がす

 

特徴を全て備えています。そのことからウィンザーチェアが現代椅子の源流で

 

 あることを立証する貴重な歴史的資料といえるのです。現在、V&Aミュージ

 

 ャムは2001年に大改装され、これらのウィンザーチェアは西方4キロの地

 

にある倉庫に厳重保管され、表では見ることができなくなっていました。幸

 

い、FDY家具デザイン研究所で、その現代椅子の原点でもある歴史的な資料

 

にレプリカではありますが、直接触れることができることになったのです。




1990年代までV&Aに展示されていた3脚のウィンザーチェア



ヴィクトリア&アルバート・ミュージャム

Victoria and Albert Museum

(V&A)



ブログ:ゴールドスミス・ウィンザーチェアのなぞについて



「ゴールドスミス」チェア
’Goldsmith’chair
 1760c