2001年 V&Aにおける「ゴールドスミス・ウィンザーチェア」の実測調査







このゴールドスミス・コム・バックアームチェアーをよく眺めてみると、その丸くお皿状のサドル形シートの後部が、背を支える2本のスティックを差し込むためのいわゆるボブ・テールと呼ばれる部分に広がって延びています。シートの丸い形にそって扇型に上に伸びたスティックは笠木に達し、しっかりと後ろを支える構造になっています。アームは3つの部分にカットされ、それぞれ湾曲した形に加工さられたあと、相欠き継ぎ(1ap joint)によって組立てられています。その両先端はアームサポートによって支えられています。
ゴールドスミスチェアの構造には以下のような特徴があります。木材をフンダンに使用しながらも、合理的に無駄のない材料の取り方には感心させられます。後ろ脚と前脚は同じ部品からなっており、座へ直接ホゾで打ちこむコロビの角度の違いでその区別がわかるのです。その違いが座り心地を決定付ける微妙な角度を形成しています。貫は3本とも同じ部品からなっており、(センターの貫が少し長め)座板の厚みと笠木の幅が同じなので、同じ部材から木取ることができます。アームとアームサポートの部材は座板の部材を二枚にわいて取ることができます。結果、500ミリ幅の部材から木取りが可能であることがわかりました。
周知のことですが、ウィンザーチェアには図面がありません。スティワートリンフォード社にさえ図面はなく、シートの型板があるだけです。図面の話をしてもあるのがおかしいという表情をされるぐらいです。そこで私なりの図面を考えついたのが軸側投影によるCAD図面です。それは座面を主軸に平面、立面、側面を描く方法です。ゴールドスミスチェアも同じ方法で図面を描いたのですが、シートは正円で、それにボブテールという尻尾の形が取り付けられた形は、まさかと思うほどの単純な構造からなっていたのです。さらに推し進めていくうちに、脚の傾きとスティックの傾きがどれも円の中心に向かっているということでした。そうするとアームはもしかして同心円からできるのではないかと推測して描いてみると、そのとおり、椅子の形になったのでした。※参照( cinii- イギリスカントリーファニチャー )
しかし後の現物との比較で、多少異なってはいましたが、基本的には同心円から図面を描くことができたのでした。そこで推察できることは、ウィンザーチェアの複雑な構造、ようするに、シートからアームを抜けて、笠木に達するスティックの角度や脚のころび角は、職人の経験と勘によるものですが、その初期は同心円の中心に向けた角度から発して、いろいろと形を変えていくうちに完成されていったのではないかという推論を立てることができたのです。
※ ころび:脚の角度が四方に末広がりに傾いていること
A survey of Goldsmith Windsor chair at Victoria & Albert Museum