現代デザインの創生期に掲げられた機能主義デザインの源流といわれる家具の一つに、英国のウィンザーチェアが
あります。18世紀の前半には、まだ地方のクラフトマンによって生産されていたこの椅子も、18世紀後半から19世紀に
かけて、マニュファクチャーによる行き届いたシステムによって生産されるようになり、その後工業化が進むにつれて中産
階級のための郊外住宅や、バーやクラブ、あるいはオフィスなど、イギリス全土に大量に普及し、そのデザインも変化し
ていきました。一方、18世紀にはアメリカに輸出されていたウィンザーチェアが、フィラデルフィアを中心に生産されるよう
になり、アメリカンスタイルのウィンザーチェアが形成されていきました。








スティック・ボウバック・アームチェア
ウィンザースツール
ゴールドスミス・チェア
コムバック・サイドチェア
コムバック・アームチェア
ホイールバック・アームチェア
ハイボウバック・アームチェア
シングルボウバック
スモーカーズ・ボウ
ラスバック・アームチェア
スクロールバックチェア
産業革命の進展とともに、椅子生産の工業化が進むにつれて、脚やシートの形は変わらずに上部の背の形は、大きく変化するようになります。コムバック、ボウバックのスタイルに代わって、スクロールバックと呼ばれるキッチンチェアが爆発的に普及するようになると、シートの下部構造にも変化が現れて、頑丈な構造の椅子が生産されるようになりました。
イングリッシュ・ウインザーチェアーの特徴は、その構造に見ることができます。厚い座板(ニレ材)を基本として、それに
旋盤加工を施した脚を直接ホゾ継ぎし、同様にホゾ継ぎによる貫(ストレッチャー)で補強した下部構造を持ち、その上部
構造には多様なデザインが見られますが、基本的にはコム・バック(櫛型の背)とボウ・バック(弓形の背)の二つのタイプ
に分類されます。
ロンドンの西郊外にウィンザー城のある地方があります。そのさらに西北の位置にハイ・ウィカムという町があります。
昔この地方はチルターンズと呼ばれ、ブナを中心にトネリコや楢などの原生林におおわれていました。イギリスには当時
いたるところにそういった地方が存在していました。17世紀までロンドンで家具生産に従事していた指物師たちが、ロンドン
を離れて郊外の森に住むようになります。彼らはロクロ(旋盤)の技術を生かして独特な椅子を生産し始めました。やがて
ハイ・ウィカムに集中してマニュファクチャーを形成していきました。そこで生産され、丈夫で廉価な椅子のことを当時財産
として価値のある高価な家具と区別して、なかば軽蔑をこめてウィンザー方面から来る安物の家具、ウィンザーチェアと呼
ぶようになったといわれています。(ウィンザーチェアについての逸話はいくつかありますが、定説はありません。)



主宰の山永耕平は、九州産業大学在職中に教育研究の一環として英国ウィンザーチェアのスタイルについて研究してきました。1996年には、スティワート・リンフォード社にて名アルチザン、ピーター・スミス氏の協力によるウインザーチェアーの製作行程を短期間でありましたが、体験をすることができました。スティワート・リンフォード社は1977年、ハイウィカムにおいて19世紀当時のウィンザ−チェアスタイルを復活させるために、リンフォード氏によって設立された家具メーカーです。今日も尚、昔のスタイルを忠実に守りつつ生産を続けている企業で、ウィンザー城やV&Aの家具修復なども行っています。
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※上記、ウィンザースツール、コムバック・アームチェア、スティック・
ボウバック・アームチェア、ホイールバック・アームチェア、スモーカーズ・
ボウはスティワート・リンフォード社製(その内ウィンザースツール、スティック・
ボウバック・アームチェアは山永個人所蔵、他は九州産業大学デザイン学科
椅子コレクションより)。その他はFDY家具デザイン研究所所蔵品(九州産業
大学芸術学部デザイン学科在職中に研究室にて18世紀、19世紀のスタイル
を複製制作したもの)。
※写真はいずれもは山永個人撮影。
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